第198回国会(常会)提出法律案では、下記の内容が決まった。
医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要1.オンライン資格確認の導入 【健康保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律(高確法)、船員保険法 】
・ オンライン資格確認の導入に際し、資格確認の方法を法定化するとともに、個人単位化する被保険者番号について、個人情報保護の観点から、健康
保険事業の遂行等の目的以外で告知を求めることを禁止(告知要求制限)する。 2.オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための医療情報化支援基金の創設【地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律】
財務省の御用新聞は「マイナンバーカード、全病院で保険証に 21年3月から」との見出しで夢のような世界を紹介している。
もちろんワンストップサービスやICTを活用した効率化には反対するつもりは毛頭無い。
問題は、12%程度しか普及していないカードをあと1年半でどう普及させるつもりなのかが気がかりなのだ。
あの手この手を考えているとは聞いていますが、いずれも何となく的外れ・・・究極はマイナンバーカードを使うと一部負担金を安くしたらどうだ、という意見もあるようだが、いかにも実業家らしい発想で脱帽。
しかし社会保障という側面から見たらそのような措置は果たして公共の福祉に資するものなのかどうか甚だ疑問を感じざるを得ない。
Suicaを初めとした電子マネーや〇〇ペイなどは、そのようなニンジンをぶら下げなくても爆発的に普及している。(厳密には様々なキャッシュバックはあるが)
要は、利用者が求める機能があれば自然と普及するはずのものなのに、国費を使って見当違いな取り組みをするのはどうなのかと感じる今日この頃・・・
さて、現実的なお話をするとマイナンバーカードが保険証となるとリーダー/ライターが必要になる。
これの購入費用は誰が持つのだろう?
ここで医療関係者が思い出すのはレセプトの電子化及びオンライン化の話だろう。国が盛大に旗を振ったものの、実際の費用負担は医療機関という情けない政策だった。
参考としたお隣韓国では、オンライン化を普及させる際には国費で賄ったと聞く。それくらいの気概がないと一気に普及はしないだろう。
もっとも今回はリーダー/ライター補助金の予算が組まれているが、機器の金額を踏まえると全医療機関に行き渡る金額ではない・・・
某御用新聞では「窓口で職員が情報を書き取る手間はなくなる」とあるが、リーダーに翳した段階での情報が正しいかどうかは分からない。つまりデータベースの更新のタイミングによっては、退職しているにも関わらず使えてしまう可能性はゼロではない。
この点は資格喪失後受診について医療機関に責任は取らせないとの話もあるようだが、果たして本当なのか・・・
また、「健康保険組合の判断で健康保険証をマイナンバーカードに切り替えれば、保険証の発行コストはなくなる」との書かれ居てる。メリットを確実に享受できるのは保険者ですわな。
さて、この記事に潜む問題点を検証してみたい。
・ 現実的には2021年3月から原則全ての病院ではなく、対応準備の整った保険医療機関・薬局から順次開始される。
・ マイナンバーカードを健康保険証として発行することは、国が全国の国保にお願いする予定。義務化ではないのであくまでもお願いレベル。
・現時点で患者から見た、現場の運用視点はない。その最たるものが、マイナンバーカードをかざすだけでは、自動で康保険証の情報は飛んで来ないということ。患者が自身の情報(マイナンバーと保険情報)をマイナポータルで紐付け登録し、医療機関側の機械が対応できて、はじめて飛んでくる。
このどれだけの患者が理解して居るのか・・・